子育て中の多くの親が、わが子の思いを尊重しながらも他人のことを思いやれるような人になってほしいと思いますよね。しかし子育てをしていく上で、これほど難しいものはありません。では、具体的にどのように我が子に関わることが、思いやりを促すことになるのでしょうか。他人に対して思いやりの心を持ち、行動するためには、他人の思いや考えを理解する必要があります。実はこの他人の気持ちを理解していく時期が幼児期になります。言い換えると、幼児期がこのような見えにくい部分が育っていく時期でもあります。
1歳半ごろになって、自分という存在を意識できるようになり、他人という存在がいることに気付きます。そして、このころから少しずつ言葉が出始め、自分の思いを少しずつ言動として表すようになってきます。これが急激に出てくる時期が2歳から3歳ごろに見られる第一次反抗期です。そして、4歳ごろから少しずつ他人の思いがわかるようになってきます。概ね年長児ぐらいになるとほとんどの子どもは他人の気持ちを推し量ることができるようになります。この過程が乳幼児期なのですが、上記の例は一つの目安で年齢が上がると他人の気持ちが理解できるようになるわけはありません。この過程において、集団生活を経て他人ともまれる経験により他人の気持ちの理解を理解していくようになるのです。特に同年代の集団では、自分の思い通りにならない経験や他人と衝突する経験がとても重要になります。いわゆるイザコザと言われるものです。対等の関係でぶつかるイザコザを経験することで、自分と他人とは異なる思いを持っているということを経験から学ぶことになります。
この過程において、家庭でも同じですが、わが子を尊重するという意味を保育者や親は正しく理解する必要があります。わが子の思いを尊重するというのは、子どもの思いを100%実現することではありません。ものの善悪がままならない子どもの思いをすべて叶えることが、子どもの思いを尊重することと同義であると考えるのはいささか早合点であると思われます。わが子の思いを尊重するとは、わが子の思いを受け止めても、その思いから生じる行為すべてまでも認めることではありません。つまり、大人は子どもの思いを、言動を通して受け止めながらも、正しくないものについては、ダメだということを伝えていくことが、物の善悪を理解していくことになります。子どもの思いをすべて実現させてあげることが、子どもの思いを受け止めることではなく、社会のルールや家庭のルール等ものの善悪という枠組みを子どもに伝え、その中で子どもが選択できるようにしていくことが、わが子の思いを尊重し、他人のことを思いやれる子どもが育っていく環境となります。