体験を通して学ぶ大切さ

大人になってわからない言葉に出会うと、辞書を引いたり、人から聞いたりして理解していきますよね。でも子どもが大人と同じように学習してもなかなかうまくはいきません。例えば、「思いやり」ということを「他人に対して優しいということ」と理解しているだけで、果たして子どもは他人に対して「思いやり」の行動をとることができるのでしょうか?

このような問いがあったら、僕はNoと答えます。言葉を記号として教わってもダメなんですね。「思いやり」とはどういうものであって、どうすることが「思いやり」であるかを体験を通して理解しないと子どもには定着しません。極端な話かもしれませんが、体験を通さずに頭の中だけで理解していると大きくなったときに、国語の問題で登場人物の心情は答えられるようになるかもしれませんが、実際の場面では相手に思いやりの気持ちをもって適切な対応を常にできるかというと、まったくそうではないと思います。状況に応じて人の気持ちは変化する訳ですし、人によって思いも違います。だから、体験を通してその多様性を理解してはじめて状況に応じた対応ができるようになるものだと思います。
体験を通して「どうすれば適切なものになるのか?」、「どうすれば相手に伝わるのか?」そのためには「どんなタイミング」で「誰にどう言えば、どう対応したらよいのか?」を考え実行することが大切なのです。そこで、相手との間に双方向での気持ちのやり取りがあり、それを通して適切な状態になるようにしていくわけですから、言葉を記号として捉えているようでは、相手とうまくやり取りをすることができません。体験を通して相手のことを考え、状況を予測して自己を振る舞うことが大切なのです。そして人と接し、交わることで他人とうまくやっていく術を学んでいくということにつながります。そのためには、子どもが自分自身の関わりによって人間関係の幅を広げていけるような機会の提供が幼稚園では大切な役割としてあげられるのではないかと思っています。