子どもの絵の見方

「子どもの絵ってどういう絵がいいんでしょうか?」、このような疑問を持たれる方も多いのではないかと思います。
「大きく描けている絵が良い」、「緻密に描けているのがよい」などなどさまざまな考え方があると思います。しかし、僕たちはこのように考えます。「その子の思いがキャンバスの上で表現できていればよい」と思っています。幼児の絵は上手い下手で判断するものではありません。このようなことを言うと、「絵画の指導っていらないんじゃないの?」と思われる方もいらっしゃるかも知れません。これもノーです。少しややこしいので例をあげてみます。もし、観察画(主に静物を見て描くもの)を描いている場合に、画用紙に大きく描けているけど、大ざっぱにしか描けていない子どもにはよく見て描くということを指導します。見るポイントなど子どもが気付けるようなヒントを指導の際に与えます。その逆で「緻密に描けているけど小さい絵」を描いている子どもには画用紙の大きさのことを話して大きく描けるように指導をします。

多くの子どもは一度にいくつものことをするのが苦手です。だから前者のように「大きく描けていたけどもう少しよく見て描こうよ」と声をかけることによって絵が小さくなってしまうこともしばしばです。それなら言葉がけをしないほうがいいんじゃないの?」と言われそうですが、結果にのみ目がいくとそのような解釈になってしまいます。
子どもは一度にいくつもに注意をよせることができないということを思い出してください。つまり、表現するに当たっては注意をしていることしか表せないとしても前のものができなくなってしまった訳ではないのです。簡単に言うと、例の場合、大きく描けていた子どもに「もっとよく見て描こう」と言葉がけをした結果、よく見て描けるようになったが、絵が小さくなっていたとしても大きく描くことができなくなってしまったのではないということです。

少しずつ少しずつこのような体験を重ねることで子どもは自分の思いをうまく表現できるようになっていくのです。性急に結果を求めるのではなく、子どもたちが形を変えて自己を表現していたらそれは少しずつ成長している証だととらえてあげてください。
もちろん、描画においても子どもの興味関心をそのものに向けさせる必要があります。この例えは導入をきっちりとした上での話ですのでお間違えなく。