子どもの語彙の獲得過程

 人は話し始めるのにその準備を生まれてしばらくして行います。クーイング、喃語などという言葉を聞かれたことがあるかと思います。1歳までの間に言葉にはなっていませんが、そのような準備期間を経て、単語から話し始めていきます。生まれてから2か月ぐらいまでの間は、何も見聞きをしていないように思えますが、実は赤ちゃんはしっかりと見聞きしています。ですから、赤ちゃんにかかわる大人は、この事実を踏まえて、赤ちゃんの顔を見ながら話しかけることが大切であると言えます。そして、だいたい生後3か月ぐらいになると自分の発声に対して、自分の周りの人が応答してくれることに気づいていきます。4か月にもなれば、母親と見知らぬ人との顔を見分けることもできるようになってきます。このように赤ちゃんは生後すぐから、大人が想像している以上のスピードで発達していくわけです。
1歳ごろになると初語が表れてきますが、その後はこの状態が6か月ぐらい続きます。1歳半から2歳にかけては単語を組み合わせて話す2語文が登場してきます。例えば、「ぼく、いく」などのようなもので、自分の意思を表すこともできるようになるのがこの時期です。幼稚園への入園ぐらいの時期では3語文が表れ始めます。早い子どもだと、2~3歳ごろには接続詞を使って文章をつなげることができるようになったり、行為の理由を説明したりすることができるようになります。
語彙数の増加は幼稚園入園前の3歳ぐらいで1000語ぐらいに到達すると言われています。そして小学校に進学するまでには、2500語ぐらいの語彙の獲得があり、しりとりなどの言葉のゲームもできるようになります。
これはあくまで標準的な言葉の獲得の流れです。人の言葉の獲得はかなりの個人差があります。この個人差は子どもが置かれている環境に左右されます。例えば、比較的無口なご両親に育てられた場合と、よく話をされる両親に育てられた場合は、子どもの語彙数に違いがある場合があります。また同じ家庭であっても性別や出生順位によって異なる場合もあります。ここで示す語彙数は標準的な目安です。この語彙数に達していないからと言って、即発達的に課題を抱えているかというとそうではありません。しかしながら、3歳を超えてまったくの発話がない場合、心配な方は心理士等の専門家に相談されることをお勧めします。