絵本ってどうやって選ぶの?

  絵本と紙芝居の違いをみなさんは、お分かりですか?両者はよく似た存在ですが、少し役割が異なります。絵本は主に少人数向けで、紙芝居は大人数向けに作られています。保育ではどちらもよく使用しますが、家庭では主に絵本が活躍することとなります。今回は絵本の持つ良さを少し紹介したいと思います。保育者になるためには、児童文化や保育内容言葉の授業で絵本について勉強します。僕も現在、大学で保育内容言葉の授業を担当しており、学生の前で絵本の役割や意義などを話します。その時によく聞かれることが、絵本の選び方と絵本の読み方です。どちらもさまざまな書籍が出版され、色々な考え方が紹介されていますが、ここで紹介することは、その色々な考え方の一つとして捉えていただければと思います。
 まず、絵本の選び方ですが、一番大切なものは、お子さんの興味関心がどこにあるのか、ということを考えてみるとよいかと思います。興味がなければ子どもは絵本に耳を傾けてくれない可能性があります。子どもはとても正直です。まずはこれをスタートにしてみてください。
 次にお子さんの発達に注目してみてください。乳児と幼児では絵本の役割が異なります。乳児では自分がすでに体験したことを追体験しながらその物と絵本とを結びつける再認の役割が絵本にあります。このため、1歳以下のお子さんの場合は、リアルな絵や写真が良いと思われます。しかし幼児になると、絵本の役割は変化します。物語の内容へと少しずつシフトしていくわけですが、発達にあったものでないと、子どもには絵本が楽しくうつりません。2~3歳の子どもに複雑な内容は理解できないですね。絵本に「〇歳向け」などのような記載がある場合、一つの目安にしていただくと良いかもしれません。そして、年齢が高くなると、絵本がもつテーマや性質が子どもにとって将来役に立つ、もしくは問題解決になりうるものか、という視点で選ぶこともできます。例えば、ルールなどの規範や道徳性を、絵本を通して身に付けてほしいというような親としての子どもへの願いや思いを伝える役割です。
 最後に親として絵本を読んでみて面白いと思えるものであるということも重要な判断基準になります。絵本の大きな利点として、絵本を通して親子で感情のキャッチボール(双方向での感情の行き来)ができるという役割があります。これは絵本の読み方に繋がることですが、読み手である親が絵本を読んで面白いと思ったり、感動したりしないと子どもとその感情を分かち合うことができないということです。つまり、子どもに面白いと思ってもらえるためには、親が面白いと思い、その面白さを子どもに伝えようとする気持ちが大切だということです。
 絵本の読み方としては、読み手が面白いと思うところを面白く読んであげればよいわけです。絵本の専門家の先生の講演を聞いた時に「絵本は抑揚をつけずに読まないと子どもが考えることをしません」と言われていましたが、絵本の読み聞かせを通して読み手と聞き手がコミュニケーションをしている(感情の行き来をしている)と捉えるならば、絵本の専門家の言うような読み方は意味をなさないものになります。専門家の言う読み方は少し年齢の高くなった児童期以降の方法ではないかと感じます。
 以上のように絵本を選ぶ際にはお子さんの興味・関心、発達、親の願いや思い、そして選ぶ本人が面白く思ったり、感動したりしたものを基準にして絵本を選んでみるのも一つの方法だと思います。