「ちょうどよい」という感覚

大人にとってはごく当たり前のことですが、「ちょうどよい」という感覚は子どもにとってはなかなか理解しにくいものです。僕も仕事で先生達に「ええ感じでやっといてな」と言うことがありますが、これは先生達がその状況にあった「ちょうどよい」という感覚を身につけているから言えることなのです。新人の先生にはこの言い方では通じません。
それではこの「ちょうどよい」という感覚はどうすることで理解できるのでしょうか?それは新人の先生には理解が難しいというところに大きなヒントがあります。つまり、体験することによってこの「ちょうどよい」という感覚を身につけることができるようになるのです。でも、ただ、体験するだけでは、この感覚を養うことはできません。大切なのは「意識する」ということです。例えば、ちょうどよい固さ、といっても柔らかいという感覚と固いという感覚を理解していないとその「ちょうどよい」という感覚を理解することはできません。つまり多様な感覚を体験しないといけない訳ですが、固いとか柔らかいという感覚を意識していないと、子どもには何も残りません。例でいうと、ちょうどよい固さというのは、触っているという感覚を意識して体験をしなければならないということです。

幼児教育も同じです。言葉で子どもに説明しようとしてもなかなか大人が思っているように伝わりにくいですが、子どもが体験することで言葉では伝えにくいことが伝わります。でも体験するだけではダメなんですね。私達保育者の役目は上の例で言うと触っているという感覚を子どもに意識させてあげることなのです。ですから、子どもにとって「ちょうどよい」環境は子どもが直接体験するだけではなく、きちんとそれがわかるようにねらいをもった先生の導きがないとうまく機能しません。幼稚園の役割として大切なのは子どもに直接体験させるだけではなく、その直接体験が生かせるような保育のねらいや環境設定が大切なんです。